すぐに各社からレスポンスが届いて、翌日は対応が大変だったという話をしました。
今回は、その後さっそく訪ねてきてくれたA社の担当・Mさんとのやりとりの様子をお話しします。
前のめり担当・Mさんとの初顔合わせ
「一般媒介」と「専任媒介」って何?
翌朝早々に、前のめりでレスポンスをくれたA社の担当・Mさんは、爽やかな見た目の推定30歳前後、メールや受け答えの様子から、非常に頭の回転の速い人だなぁ、という印象でした。実際、営業成績トップで表彰もされてるらしい。(←自ら言っていくスタイルだった)
個人的には非常~に好印象です。優秀な人は話が早いので大好きです。
そのMさんに、売却までの手続きを一から分かりやすく説明してもらいました。
この時に初めて気が付いたんですが、そういった下調べを私は事前にまったくしていませんでした。
何せ思い立ったのがつい昨日、まだ売るかどうか覚悟も決まっていなかったとこからの今日。
何をどうすれば良いのか、どうすべきなのか、どうすべきではないのか、まったく分かりません。
ところが、Mさんはとにかくグイグイきます。
まず、仲介にいくらぐらいの費用がかかるかを説明してくれました。
これは明確に法律で決められているそうです。
売却する物件の金額などによっても変わるけど、
仲介手数料=「売却価格×3%+6万円+消費税」
ちなみにこれが上限だけど、まぁどの会社も上限いっぱい取りますよねー。
今回私が売りたいマンションもこれに該当します。
仮に3000万円でマンションを売ったとしたら、仲介手数料は105万6千円。
無事にその会社が不動産を売却してくれた時にのみ、この手数料を払えばOK。
逆に言うと、それまでの費用は全部不動産会社が負担してくれます。
suumoとかホームズなんかに物件広告を出したり、現地を見たいというお客さんに物件を案内してくれたり、手続き書類を用意してくれたり、契約に立ち会ってくれたり、ですね。
なるほど、これで契約取れずに他社に持っていかれたら悔しいだろうな。
あと細かい費用として、印紙代1万円、住宅ローンを組んだ際の抵当権抹消登記手続きを司法書士にお願いした場合、その手数料2~3万円、売買代金の振込手数料などがかかってきます。
そこまでは納得。
Mさん:「つきましては、仲介のお手伝いをさせていただく契約として、『一般媒介』と『専任媒介』の2種類がありまして…」
はい、初めて聞く言葉キターー!
ざっくり説明ですが。
正確にはMさんは、「専属専任媒介」についても触れ、さらにはそれらの違いを説明するのに必要不可欠な「レインズ(REINS)」とは何ぞや、ってことまで、無知な私でも分かるように丁寧に教えてくれました。
以下の記事で詳しく解説していますので、是非併せてご覧ください。
このMさん、思い返しても、非常に良心的な進め方をしてもらえたなぁとしみじみ思います。
こちらは何も分かってないのはバレバレだったんだから、適当に誤魔化して専任媒介契約を結ぶのはたやすかったと思うんですよね。
ところが、Mさんは一つ一つに公正な説明をしてくれた上で、決定権をこちらへ投げてくれました。
その結果、アホな私でもさすがにこう言えたんですよ。
「とりあえず一般媒介でいいですか?」
いきなり契約決定!
結果として、この時の決定がターニングポイントになりました。
本来、会って数時間で「〇〇契約」と名の付くものに印鑑を捺すのって、絶対ダメ。
「いただいた書類を持ち帰って検討し、改めてご連絡いたします」
皆さんは絶対にこう答えてください。
絶対だぞ!
ただ、不動産を売却したいのであれば、いずれどこかの会社と媒介契約を結ぶ必要があり、それを一社専任にするのか、一般媒介で複数社にお願いするのかの選択は遅かれ早かれやってきます。
売却自体に迷いがあるなら話は別ですが、まずはどこかへ一つ、一般媒介で任せてみて様子を見ても良いんじゃないかと思います。
動いてみないと感じもつかめない。
売却価格はいくらにしたらいいの?
「前のめりM」はさらに畳みかけます。
「売却価格はいくらをご希望ですか?」
次から次へと試練を与えてくるなぁ、君!
知らんがな、と言いたい気持ちをグッとこらえ、もらった資料を改めて眺めます。
これもMさんが説明してくれたんですが、実は不動産の最初の査定額(机上査定)というのは、
不動産会社による大きな違いはない
ことが多いんだそうです。地価、築年数などの「相場」によって決まるため、部屋の中を見なくても決められて、どの会社もほぼ同額になるらしい。
何だと? じゃあ「イエウール」の意味とは。
ちなみにこれは本当で、この後続々と各社から査定額が記載された資料が届きましたが、見事にみんな同じ金額でした。
逆に、それらと大きくはずれた金額、つまり「相場」ではない金額を言ってきた場合、それが高くても安くても、その業者には何らかの思惑があることが多いので、気を付けた方が良いんだとか。
そういう意味では、「イエウール」などの一括査定サイトを使うことで、おおよその「相場」と、その適正価格をきちんと提示してくれる不動産会社を知れる、というメリットがあるわけです。
なんていうか、本当にクセのある業界ですね。
で。ここで一つ大きな困惑が。
そのどこでも同じという査定額が。あまりにも。
良すぎる。
悪いよりええやん、と思われそうですが、むしろそっちのが予想ができる分、驚きはしないんですよ。そんなもんかー、ってガッカリはするだろうけど。
だって想像つかないじゃないですか。
買った時より何百万円も高い値段です。嘘でしょ!?
あの、床も壁もボロボロで汚れてて、食洗器もグリルも壊れてて、スイッチ類がことごとく黄ばんでる古びた部屋が?
まったく、これっぽっちも想定してなかった事態でした。
おかげで頭が真っ白です。
Mさんは、当然のように「査定額と同額」を押してきます。
「もっと高くしても売れますよ」とも。
いやいや、無理無理!
「でもほんと部屋汚いし、あちこち壊れてるし…」と、なぜか必死でいいつのる私。
何なんだろうか、あの心理。遠慮とか謙遜とか、日本人独特の?
でもこの時の私は遠慮したつもりはまったくなく、本気で「そんなわけはないから、何とかして否定しなければ」という気持ちで頭がいっぱいでした。
Mさんは冷静に、昔より値上がりした理由を説明してくれました。
- そもそも、都市部のマンションの値段そのものが高騰していること
- 駅近(最寄り駅まで歩いて5分以下)であること
- その最寄り駅の人気が以前より上がっていること
- 3LDKで約70㎡という一番中古需要のある間取り、サイズであること
- マンションの管理がしっかりなされ、建物の価値が保たれていること
どれも私の力ではなく、周囲の環境がたまたまラッキーな方に転がった、ということです。
買った時は、最寄り駅周辺は学区も悪いと言われ(子供がいない私たち姉妹には全然ピンとこなかった)、卸問屋が並ぶ下町っぽさのせいで、まったく人気のないエリアだったため、買った当初ですら「建物の造りのわりにお手頃価格だなぁ」と思っていました。
それが年数経るうちに、実は新幹線停車駅に近く、その駅が大規模開発されたことで、周辺のこの近辺の人気も押し上げられ、なぜか今では「学区も良い」という扱いになったらしい。そんなことあるの?(まったくピンとこない)
優秀なMさんは、わっかりやすく私の腑に落ちるたとえをしてくれました。
「宝くじに当たったようなものですよ」。
……な、なるほどー--!
それに、室内は次に入居する方が全面リフォームをするのが当たり前なので、どれだけ汚れていようがまったく関係ないですよ、壁も床も全部貼り替えて新品同様になりますよ、とも教えてくれました。
ようやく、ちょっとだけ冷静になることができました。
ただ、査定額と同額というのはどう考えてもムリ、としか思えず、結局
「査定額-130万円」で売りに出すことに決めました。
これは今でも悔いの残る部分です。
営業トップのMさんが言うんだから、本当にもっと高くても売れたんじゃないだろうか?
この値段にしたから売れたかも、という可能性もあるので、たらればに過ぎないんですが、やっぱり悔いが残ります。
でも私には、これでも十分すぎるとしか思えませんでした。
Mさんも惜しそうにしてましたが、でも私はその時、妙な満足感があって、
「その代わり、基本的に値段を下げることはしませんから。この値段で買ってくれる方にお譲りしたいと思ってますので!」
と、えらそうなことを言いました。
私には商売の才能はないなぁ、と思います。
「自分を安く売ってはいけない」という言葉がありますが、「高く売る」のは、すごく、すごく難しい。
勇気が必要です。
相場を知る。己を知る。
結局「知ってるかどうか」なのかなと思います。
「中古の不動産が、新築時よりも高く売れることがある」という事実を、私はその時まで知りませんでした。知ってれば違った、のかもしれません。
とにもかくにも、歯車は回り出しました。
いきなり初日に一般媒介契約をこのA社と結んだおかげで、その後の展開はいっそう加速していきます。
思い返しても、ただのラッキー。一歩間違えれば、と思うと冷や汗が出る思いがします。
偶然に偶然が重なった結果、私はこのたった数日後、今回のA社ではなく後々登場するB社に、私の言い値そのままで売却をお任せすることになるのでした。
B社とのやりとりについてはこちらにて。